分泌異常による皮膚疾患
分泌異常による皮膚疾患には、どんなものがある?
分泌異常による皮膚疾患には、
- 尋常性痤瘡(ニキビ)
- 腋臭症(ワキガ)
- 酒皶(アカハナ)
- 毛包虫性痤瘡
- 多汗症
- 無汗症、乏汗症
- 汗疹
などがあります。
①尋常性痤瘡(ニキビ/じんじょうせいざそう)
尋常性痤瘡(ニキビ/じんじょうせいざそう)とは?
尋常性座癒とは、毛包脂腺系に生じた炎症性疾患です。ニキビともよばれます。
軽症でも搬痕を残すことがあります。男性では10代後半、女性では10代後半から20代前半にかけて多く、男性のほうが重症化しやすい。
皮膚の症状は、初めは炎症のない面皰(めんぽう)が生じ、次に炎症をともなう膿疱へと症状が進む。
面皰(めんぽう)とは?
ニキビの最初の炎症のない状態で、角化した部位が栓のように蓋をして、皮膚の外側に皮脂が出られなくなり、毛包内に皮脂が貯留してしまい、ニキビ菌が増殖した状態。
- 閉鎖面皰・・・白いニキビのこと
- 開放面皰・・・黒いニキビのこと
尋常性痤瘡(ニキビ)の細菌因子は?
ニキビの原因となる、皮脂を栄養分として培養され増えた細菌のこと。
- アクネ菌
- 表皮ブドウ球菌
などがあります。好脂質性及び脂質依存性をもち、蓄えられた皮脂を分解します。
性ホルモンと尋常性痤瘡(ニキビ)との関係は?
ニキビの発生は、性ホルモンが関係しています。
性ホルモンには、
- 男性ホルモン(アンドロゲン)…脂腺な働きを高め、皮脂の分泌を増加させる
- 黄体ホルモン(プロゲステロン)…子宮の環境を整え妊娠しやすい状態にしたり、妊娠後に妊娠状態の安定化に関与したりする
などがあります。
ニキビができるおおまかな流れ
男性ホルモンによる皮脂分泌・角化の亢進
↓
毛包漏斗部の角化が亢進角化した部位が栓のように蓋をして、皮膚の外側に皮脂が出られなくなる
↓
毛包内に皮脂が貯留され、ニキビ菌が増殖(面皰:閉鎖面皰…白いニキビ
開放面皰…黒いニキビ)
↓
ニキビ菌が増えて細菌リパーゼを出し、遊離脂肪酸を生成
↓
その刺激にや集まった好中球が活性酸素を出すことによって炎症が生じる(赤ニキビ)
↓
さらに炎症が進むと膿疱になる(黄色ニキビ)
②腋臭症(ワキガ/えきしゅうしょう)
腋臭症とは?
腋窩(わき)のアポクリン線から分泌される汗に、刺激臭・悪臭があるものを言う。
腋臭症はいつ頃発病する?
アポクリン腺が機能を開始する思春期に発病します。
日本人には比較的少なく、これをきらう人もいるが、黒人や白人では、アポクリン腺がよく発達しているので、半数以上の人がワキガをもっています。
アポクリン腺とは?
③酒皶(アカハナ/しゅさ)
酒皶とは?
中年以後の女性や大酒飲みに多くみられる病気で、鼻や両頬などに、発赤と毛細血管の拡張が起こった状態。
ニキビのような発疹ができてくることもあります。
④毛包虫性痤瘡(もうほうちゅうせいざそう)
毛包虫性痤瘡とは?
毛包虫は、正常な皮膚の毛穴や脂腺内に存在する常在の虫であるが、異常に増殖し、顔にニキビと同様の症状となったもの。
⑤多汗症(たかんしょう)
多汗症とは?
汗の分泌が異常に増加する病気。いわゆるあせっかきといわれるもの。
全身的に汗の多く出るものと、一部に限って多く汗のでるものとがあります。
⑥無汗症、乏汗症(ぼうかんしょう)
無汗症とは?
発汗がまったくみられない状態。
乏汗症とは?
発汗が明らかに減少した状態
無汗症、乏汗症の危険性は?
汗が出ないと体温調節ができなくなり、高温が長時間続くと熱中症となる危険が増す。
無汗症、乏汗症の原因は?
原因には先天性と後天性のものとがあり、中枢神経、脊髄神経、末梢神経、エクリン汗腺などの異常が考えられます。
エクリン腺とは?
⑦汗疹(かんしん/あせも)
汗疹とは?
アセモは、種々の要因によって汗孔がふさがれ、汗が皮膚表面に出なくなり、そのため、汗が汗管の中につまり、汗管が破れて汗が皮膚の内部に流れ出るために起こる病気のこと。
汗管とは?
化膿菌による皮膚疾患
化膿菌による皮膚疾患はなぜ起こる?
皮膚は常に細菌によって汚染しているが、自己浄化作用によって菌の繁殖を防いでいるので滅多なことで化膿しない。しかし、それが損なわれたとき、傷ができたときには細菌感染を起こし、化膿菌による皮膚疾患を起こす。
化膿菌とは?
化膿を起こす菌を総称して化膿菌という。(ブドウ球菌、レンサ球菌など)
化膿菌による皮膚疾患にはどんなものがある?
化膿菌による皮膚疾患には
- 伝染性膿痴疹(トビヒ)
- 毛包炎
- 癤(せつ)
- 癰(よう)
- 尋常性毛瘡(じんじょうせいもうそう)
- 丹毒(たんどく)
などがあります。
細菌感染は、感染方法によって何と何に分けられる?
これらの細菌感染は、感染方法によって原発性細菌感染と続発性細菌感染に分けられます。
原発性細菌感染
細菌によって感染した細菌感染
続発性細菌感染
他の皮膚病に伴って二次的におこった細菌感染
①伝染性膿痴疹(トビヒ)
表皮が化膿菌、特にブドウ球菌に侵されて起こ利、で、大きな水疱・膿疱が、顔や手足の方々にとびとびにできる皮膚疾患。
そのあとがただれて、やがて薄い痂皮をつくるものと、厚い痂皮をつくるものとがあります。
トビヒの人には、病気が治るまで理容・美容の施術をしてはなりません。
②毛包炎
1個の毛包に化膿菌(主にブドウ球菌)が侵入して炎症を起こしたもの。
③癤(せつ)
毛包炎の炎症がさらに悪化し、毛包の周囲や下方の深くに及ぶと赤くかたい結節となり、中心の毛包部は壊死し、黄緑色の膿栓となって痛みも強くなった状態。
この状態を癤(せつ)という。オデキやネブト、カタネなどとも呼ばれています。化膿が進むと膿瘍となり、やわらかくなります。
④癰(よう)
数個の癤(せつ)が集まり、全体として1つの局面をつくったもののこと。
⑤尋常性毛瘡(じんじょうせいもうそう/カミソリカブレ)
ひげの毛包に化膿菌が感染して慢性の炎症を起こすもの
理容・美容の施術に際しては、化膿を引き起こさないよう、注意しなければなりません。
- レザーは一人一人よく消毒したものを使うこと
- アフターシェービングローションかクリームをよく、すりこんでおくこと
- 技術者の手をきれいにし(特に爪の)手入れをよくして、手指から病原菌をうつさないようにすること
⑥丹毒(たんどく)
溶血性レンサ球菌が、皮膚の小さな傷口から侵入して起こり、寒気と共に発熱し、皮膚に境界のはっきりした発赤と腫脹(しゅちょう)ができ、患部に激しい痛みがある皮膚疾患
この病気を予防するために、
お客さまの皮膚に傷をつくったり、また、傷のあるところに不潔な器具を使用しないようにすることが大切
ウイルスによる皮膚疾患
ウイルスによる皮膚疾患には、どんなものがある?
ウイルスによる皮膚疾患には、
- 帯状疱疹(帯状ヘルペス)
- 単純性疱疹(単純性ヘルペス)
- 伝染性軟属種(ミズイボ)
- 疣贅(イボ)
- 水痘(ミズボウソウ)
などがあります。
ウイルスによる皮膚疾患は直接さわることで感染するので、理容・美容の施術の際や消毒には注意が必要。
真菌による皮膚疾患
真菌とは
真菌とは、カビのこと。
人に皮膚疾患を起こさせる真菌(カビ)には、どんなものがある?
人に皮膚疾患を起こさせる真菌(カビ)で日常よくみられるものに、
- 白癬菌(はくせんきん)
- 癜風菌(でんぷうきん)
- カンジダ などがあります。
①白癬菌による皮膚疾患
真菌による皮膚疾患で一番多い。高温、高湿のもとで発病しやすい。このため5〜6月ごろに、再発したり悪化したりします。
シラクモ(頭部白癬)とは?
小学校の子どもにできやすい。頭に指先大から10円硬貨くらいの大きさの円形の白い斑ができます。
シラクモのできた部分の頭毛は表皮のすぐ上で切れているので、脱毛したようにみえます。
体部白癬(ゼニタムシ/斑状水疱性白癬)とは?
夏に発生しやすい病気で、全身の軟毛の生えている部分のどこにでもでき、成人も子どももかかります。
はじめ小さい紅斑として現れ、しだいに大きくなって、銭(硬貨)のような円形をした斑ができ、これが周囲に広がるにつれて、その中心部(病巣)が治っていき、病巣(病気の中心部)のへりに小丘疹、小水疱が並んで輪状になります。かゆみがあります。
股部白癬(インキンタムシ/頑癬)とは?
主に青年男女の大体内側、臀部、下腹部、陰部にできます。股部白癬は別名を頑癬という。
症状
- 広がると病巣は不規則な地図状になります。
- へりは堤防状に隆起
- 中央部は色素沈着がみられる
- 皮膚が肥厚(ひこう)しています。
- かゆみが強い。
足白癬・手白癬(ミズムシ/汗疱状白癬)とは?
足の指の間や足底の皮膚に、かゆみのある小水疱や鱗屑(りんせつ)、糜爛(びらん)を生じる病気。
- 別名を汗疱状白癬という。
- ミズムシは、主に靴下や靴、風呂場のマットなどから感染します。
爪白癬とは?
爪が白癬菌侵されると爪白癬とよばれます。
顔面単純性粃糠疹(ハタケ)
一時白癬の一種として扱われていたが、ハタケは白癬菌による病気ではない。
- 児童の顔などにみられるが、たいていは自然に治ます。
②癜風菌による皮膚疾患
癜風(クロナマズ)
真菌の一種である癜風菌によって起こります。
症状
- 成人の胸、背、腹、腋窩などに発生します。
- 大きさは米粒大から小指の大きさくらいまでで、円形
- 淡褐色や白色
- 表面にふけのような鱗屑がある
③カンジダによる皮膚疾患
カンジダによる皮膚疾患には、
- カンジダ性指間糜爛症
- カンジダ性爪囲炎
- カンジダ性爪炎
- 口角糜爛症(こかくびらんしょう)
などがあります。
カンジダ性指間糜爛症(しかんびらんしょう)
カンジダによる皮膚疾患
症状
- 指間に紅斑が生じ、その中心部が白色に浸軟する
- 鱗屑(角質)がとれて糜爛(ただれたような)状態になります。
- 灼熱感、疼痛(とうつう)、掻痒(そうよう)をともなうこともある
- 一般に指間の開きの狭い第3指間に初発します。
カンジダ性爪囲炎
カンジダによる爪の疾患。爪は皮膚です。
症状
- 爪上皮が消失して爪郭部周囲の皮膚が発赤し、浮腫性に腫脹
- 痛みは軽い圧痛程度
- 圧迫により、少量のうみが出てくることがある
爪郭部とは?
カンジダ性爪炎
症状
- 爪の肥厚、籍蘊、黄白色に籠属、表面の前凶、破壊など
- 爪根部から爪の先端部に向かって進行(爪白癬とは逆)
口角糜爛症(こかくびらんしょう/カラスのお灸)
5~6歳の幼児から学童、また高齢者に多い。
症状
- 両口角部に発赤、糜爛、亀裂を生じ、落屑(らくせつ)、痂皮を伴う
- 口を開けた時に疼痛がある
衛生害虫による皮膚疾患
衛生害虫による皮膚疾患にはどんなものがある?
衛生害虫による皮膚疾患は
- 疥癬(かいせん)
- 虱症
- ノミ・カ・トコジラミ、ガ、ドクガによるもの
があります。
①疥癬(かいせん)
ヒゼンダニという一種のダニの寄生によって起こる皮膚疾患。
症状
- 手の指の股、手首、肘の内側、腋窩、下腹、腰、臀部等に非常にかゆい発疹ができる
- 感染力が強い
このようなお客さまが来たら、治療してから来るようにすすめます。
②虱症
虱は付着する部分により頭虱、毛虱、衣虱があります。
症状・特徴
- 強いかゆみが生じます。
- 頭髪の接触、ブラシなどの貸し借りなどで感染します。
- 髪が肩まであると衣服にも触れやすく、感染しやすい。
③ノミ・カ・トコジラミ(ナンキンムシ)による皮膚疾患
ノミ、力、トコジラミ(ナンキンムシ)に刺されるとかゆみの強い紅色の発疹ができます。
病気を媒介することもあるので、理容所・美容所にはこのような虫がいないように環境を整備します。
ハチによる皮膚疾患
ハチによる皮膚疾患の特徴は?
スズメバチ、アシナガバチ、ミツバチなどによることが多く、激しい痛みと強い腫れができ、繰り返すうちに感作されてアレルギー性の強いショックを起こす。この場合は、命にかかわることもあります。
ガ(蛾)の幼虫による皮膚疾患
ガ(蛾)の幼虫による皮膚疾患の特徴は?
ドクガの幼虫には多数の毒針毛があって、これが人の皮膚に刺さり、その部位に赤い丘疹を生じます。
ドクガの毒針毛は肉眼では見えないが、強いかゆみを起こす化学物質を含んでいるので、毒針毛が刺さったたくさんの部位一つひとつに強いかゆみのある赤い丘疹が生じます。しかし、イラガの幼虫による場合はかゆみがなく、強い痛みを感じます。
ドクガによる皮膚疾患
ドクガによる皮膚疾患の特徴は?
飛来したドクガが露出した腕などにあたると、ドクがガの毒針毛が播種(はしゅ)状に飛び散って刺さり、その一つひとつにかゆみの激しい皮膚炎が起こります。
ときどき灯火に飛来し、理容所・美容所内にも飛び込んでくることがあるので注意する