法について
法とはなんぞや?(重要)
法とは、社会に秩序を与えるためのルール、社会規範のこと。
法は、人間の行為を規律する規範である。(重要)
法の規律の対象は?
- 法の規律の対象は個人に限らない。(=法人の場合もあります。)
法は、人の良心に対する訴えではない。(重要)
- 法は、人間の感覚、感情、良心などについては、直接の規律の対象とはしない。
規律…規範に基づいて自分を律すること。
規範…判断・評価・行為などのよりどころとなる規則や規準。
- 人は規範に則って行動します。
法人…会社などのこと。
- 法律によって会社などを人と認め、個人ではなくグループにも人と同じ権利を与えて活動しやすくしたもの。
- 私法人(非営利法人・営利法人(会社))、公法人などがあります。
法の規律の対象→人の行為(×人間の感覚、感情、良心)
法は国家と密接に結びついた社会規範?
法は、国家と密接に結びついた社会規範である。(重要)
- 国家の活動は、法に基づいて行われます。
- 政治を行い、法をつくるのは国家だが、国家の運営は法によって規制されています。
簡単に言うと、、、
国家は法に基づいて政治を行うが、その政治のやり方も法によってコントロールされているということ。
法は国家権力を背景に強制力をもつ社会規範?
法は、国家権力を背景に、物理的な強制力をもつ社会規範。(重要)
- 法は、国民に対し、その決まりに従うように「強制する力」をもつ。(=法を犯すと司法によって裁かれます。)
- 強制力をもつ点が、あらゆる社会規範と法との最も大きな違いになります。
簡単に言うと、、、
いいルールがあっても、それを守らなければ良くはなりません。そのため、守らせるためにリーダーは手段をつくさなければいけない。そこで破ったものには罰を与えます。このように、法には強い強制力があります。
実際の法
憲法
憲法とは?
国の最高法規です。
- (例)日本国憲法
- 憲法の下に、条約、法律、命令など各形式の法が位置づけられます。
法令とは?
- 憲法や法律のように、成文化した国内法のことを法令という。
法令には、優劣関係がある?
- 上位の法令に反する下位の法令は効力をもたない。(例)憲法>法律>命令
成文化
- 慣習として人々が周知している事や、新たに決められた事を文章として書き表すこと。
国内法
- 国内でのみ効力をもつ法。
憲法 (例)日本国憲法
- 最高法規
- 国民が制定
- 日本国憲法
参考(違憲について)
違憲について
原則:「法では、上位の法令に反する下位の法令は効力をもたない。」
違憲とは、法令・命令・規則・処分などの法令が、その国の憲法の規定に違反していることを指す。憲法違反ともいう。
過去に制定された法律が憲法に違反するという理由で改定された事例もあります。読み物として面白いので興味のある方はぜひ!↓
条約
条約とは?
国家と国家や国際機関との関係を定めたもの。
- (例)ワシントン条約、ラムサール条約、WHO憲章…
- WHO憲章などのように、憲章、協定、協約、議定書などとよばれ、条約という名がついていないものもあります。
法律(重要)
法律とは?
国会の議決によって制定されるもの。
- (例)美容師法、弁護士法、医師法、労働基準法、地方自治法…
- 美容師法は、国会の議決を経て制定された法律。(重要)
- 法律は、我が国の法形式のうちで最も主要なものであり、効力は憲法の次に位置します。
- 新たに法律が制定・改定される際には、公布→施行という手順を踏む。
美容師法の管轄は?
厚生労働省
公布とは?
制定された法令を公表して、これを一般国民が知り得る状態にすること。
公布の方式は決まっている?
公布の方式については、特別の定めはないが、現在はすべて官報に掲載して行われています。
施行とは?
法令の規定を実施すること。
法令は、公布とともに施行される?
法令はその趣旨を一般に周知徹底させるため、公布されても、ただちにその法令の効力を発動せず、一定の期間をおいて施行されることが多い。
法律 (例)美容師法
- 憲法の下
- 国会が制定
- 美容師法
命令(政令・省令)
命令(政令・省令)とは?
命令とは、国会の議決を経ずに行政機関によって制定され、公布、施行される規定。
- 政令・省令があります。
行政機関とは?
行政機関
日本の行政事務を担当する機関。府、省、庁、行政委員会など1府11省2庁。
- 内閣府
- 総務省
- 法務省
- 外務省
- 財務省
- 文部科学省
- 厚生労働省
- 農林水産省
- 経済産業省
- 国土交通省
- 環境省
- 防衛省
- 復興庁
- 警察庁
政令とは?(重要)
憲法および法律の規定を実施するために内閣が制定する命令。
- (例)美容師法施行令
- 政令は、内閣が制定する。(重要)
- 美容師法施行令→内閣が制定(重要)
政令は、罰則を設けることができる?
- 政令では、法律の特別の委任がある場合を除いては、罰則を設けたり、国民に義務を課したり、権利を制限したりする規定を設けることができない。(重要)
法令における政令の効力の順位は?
- 政令は、命令のうちでも最上位に置かれるものであり、法律に次ぐ効力をもっています。憲法>法律>命令(政令>内閣府令・省令)(重要)
政令 (例)美容師法施行令
- 法律の下
- 内閣が制定
- 美容師法施行令
- 罰則を設けることはできない
省令(内閣府令&省令)とは?(重要)
各省大臣が、その行政事務について、法律もしくは政令を実施するため、または法律や政令の委任に基づいて発する命令。
- (例)美容師法施行規則
- 省令は、各省(大臣)が制定する。(重要)
- 美容師法施行規則→厚生労働省が制定(重要)
内閣府令及び省令は、罰則を設けることができる?
- 省令も、法律の特別の委任がなければ罰則を設けたり、義務を課したり、国民の権利を制限する規定を設けることはできない。(重要)
省令 (例)美容師法施行規則
- 政令の下
- 各省が制定
- 美容師法施行規則
- 罰則を設けることはできない
法令における内閣府令及び省令の効力の順位は?
内閣府令及び省令の効力は、憲法、法律、政令よりも下位。
憲法>法律>命令(政令>内閣府令・省令)
効力の強い順!
憲法 > 法律 > 政令 > 省令
理容師法施行令・美容師法施行令は、政令?省令?
理容師法施行令・美容師法施行令は、内閣が定める政令。
理容師法施行規則、美容師法施行規則は、政令?省令?
理容師法施行規則、美容師法施行規則は、厚生労働省(大臣)が制定する省令。
参考(国家権力の仕組み)
国の権力には、
- 司法権・・・法律違反を罰する力(裁判所)
- 立法権・・・法律を定める力(国会)
- 行政権・・・法律に従い政策を実施する力(内閣)
があります。
日本では、司法を裁判所、立法を国会(衆議院・参議院)、行政を内閣が担当していて、3つの権力が1か所に集中しないようにしています。
- 裁判所HP https://www.courts.go.jp/index.html
- 国会HP(衆議院) https://www.shugiin.go.jp/internet/index.nsf/html/index.htm
- 国会HP(参議院) https://www.sangiin.go.jp/
- 内閣HP https://www.kantei.go.jp/jp/naikaku/
このような仕組みを「三権分立」と言います。
つまり国会は、法律を定める力を持った唯一の立法機関なのです。
そして、国会は、国民から直接選ばれた人たちで構成されます。自分たちに不利な法律を定められないようにするため、未来がよくなると思う法律を制定してもらうためにも、選挙は大切です。
自治法規
自治法規とは?
都道府県、市町村等の地方公共団体が自治権に基づいて制定する法令。
- 条例と規則があります。
条例とは?(重要)
条令とは、都道府県、市町村等の地方公共団体が、その権限に属する事務に関して、それぞれの団体の議会の議決を経て制定するもの。(重要)
- 国の法令に違反しない限り、地方公共団体は、その事務について自由に条例を定めることができます。
条例は、罰則を設けることができる?
- 条例には一定の限度内(2年以下で懲役が最も重い刑罰)で罰則を設けることもできる。(重要)
- 政令・省令とは異なり、条例では罰則を設けることが可能。
- 美容師法施行条例は、地方公共団体がそれぞれの団体の議会の議決を経て制定する自主法。
美容師法に基づき都道府県が条例で定めることができる事項
- 美容師が美容所以外の場所で美容の業を行うことができる場合
- 美容師が美容の業を行う場合に講ずべき衛生上必要な措置
- 美容所の開設者が美容所につき講ずべき衛生上必要な措置
各都道府県条例の効力の及ぶ範囲は?
- 各都道府県条例の効力の及ぶ範囲は、その条例を制定した都道府県区域のみ。(重要)
規則とは?
規則とは、地方公共団体の執行機関である都道府県知事、市町村長規則等が、その権限に属する事務について制定するもの。
- 議会の議決を要しない。
- 自治法規のうちでも、条例は重要な事柄について定めています。
- 一方、規則は比較的軽易な事柄について定めています。
まとめ
自治法規のうち、議会の議決を経て制定されるのは条例?規則?
A 条例
このあたりは用語が多く関係法規でもややこしいです。そのため出題頻度も高めです。
- 憲法
- 条約
- 法律(美容師法)
- 命令(政令・省令)(美容師法施行令・美容師法施行規則)
- 自治法規(条令・規則)(各都道府県、保健所設置市、東京都特別区の美容師法施行条令・各都道府県、保健所設置市、東京都特別区の美容師法施行規則)
赤字のものには美容師に関する法令が含まれるので、特に重要です。
衛生法規
衛生法規
衛生法規とは?
衛生法規とは、公衆衛生行政に関する法令のこと。
衛生の思想と実践を国民に普及し、国民の健康を保持するとともに、積極的に増進することを目的として制定された法令の総称。
衛生法規(=公衆衛生行政に関する法令)は一般衛生法規・学校保健法規・労働衛生法規の3つからなる
衛生法規の目的は?
衛生の思想と実践を国民に普及し、国民の健康を保持するとともに、積極的に増進すること
日本における公衆衛生行政に関する法令(衛生法規)は、何に基づき制定されている?
- 日本国憲法第25条第2項「国は、すべての生活部面について、社会福祉、社会保障及び公衆衛生の向上及び増進に努めなければならない」という理念に基づき、これを実施するために制定されています。
衛生行政に関する法令(衛生法規)は、( A )に規定する「国は、 すべての生活部面について、社会福祉、社会保障及び( B )の向上及び増進に努めなければならない」という理念に基づいて制定されています。
A:日本国憲法 B:公衆衛生
衛生法規の体系
衛生法規(=公衆衛生行政に関する法令)は以下の3つからなる
- 一般衛生法規 ↓につづく
- 学校保健法規
- 労働衛生法規
一般衛生法規とは?
一般国民の健康の保持・増進を図るための衛生法規
一般衛生法規(=一般国民の健康の保持・増進を図るための衛生法規)は以下の3つからなる
- 公衆衛生法規 ↓につづく
- 医療法規
- 薬事法規
公衆衛生法規とは?
公衆衛生を維持するための衛生法規
公衆衛生法規(=公衆衛生を維持するための衛生法規)は以下の3つからなる
- 生活衛生法規 ↓につづく
- 予防衛生法規
- その他の公衆衛生法規
生活衛生法規とは?
生活環境を整備するための衛生法規
生活衛生法規(=生活環境を整備するための衛生法規)は以下の3つからなる
- 生活衛生関係営業に関する法規(ここに美容師法が含まれる)
- 食品に関する法規
- その他の法規
生活衛生関係営業に関する法規には、
- 理容師法・美容師法
- 旅館業法
- 公衆浴場法
- 興行場法
- クリーニング業法
などが含まれる
衛生法規としての、美容師法・理容師法の位置付けは?
一般衛生法規の中の、公衆衛生法規の中の、生活衛生法規の中に理容師法・美容師法があります。
めっちゃ細かい分類ですよね、、、笑
衛生法規>一般衛生法規>公衆衛生法規>生活衛生法規>生活衛生関係営業に関する法規>理容師法・美容師法 です、、、
ちょこっとクイズ
Q 生活衛生法規は、公衆衛生法規、医療法規、薬事法規のうちどれに位置付けられる?
A 公衆衛生法規
出題傾向にあるのはこのへんです!
- 生活衛生法規は、公衆衛生法規に含まれます。
- 理容師法・美容師法は、生活衛生法規に含まれます。
美容師と法
美容師法を中心に、以下のような法令が全体として一つの体系をつくっています。
法律
- 美容師法
政令
- 美容師法論行令
省令
- 美容師法施行規則
- 美容師養成施設指定規則
- 美容師法に基づく指定試験機関及び指定登録機関に関する省令
条令
- 各都道府県、保健所設置市、東京都特別区の美容師法施行条令
規則
- 各都道府県、保健所設置市、東京都特別区の美容師法施行規則
総まとめ問題
法の特色に関する次の記述のうち、誤っているものはどれか。
(1) 法は、人間の行為を規律する規範です。
(2) 法は、国家と密接に結びついた社会規範です。
(3) 法は、国家権力を背景に強制力をもつ社会規範です。
(4) 法は、人の良心に対する訴えであって、物理的な強制力をともなわない社会規範です。
正解(4)・・・法は、人間の感覚、感情、良心などについては、直接の規律の対象とはしない。また、法は国家権力を背景に強制力をもつ社会規範である
法令に関する次の文章の( )内に入る語句として、正しいものはどれか。
・( )とは、都道府県、市町村等の地方公共団体が、その権限に属する事務に関して、それぞれの団体の議会の議決を経て制定するものです。
(1) 条約
(2) 省令
(3) 条例
(4) 政令
正解(3) ・・・条例とは、都道府県、市町村等の地方公共団体が、その権限に属する事務に関して、それぞれの団体の議会の議決を経て制定するものです。国の法令に違反しない限り、地方公共団体は、その事務について自由に条例を定めることができます。
美容師法とその附属法令に関する次の記述のうち、正しいものはどれか。
(1) 美容師法は、国会の議決を経て制定された法律です。
(2) 美容師法施行令は、厚生労働大臣が定める省令です。
(3) 美容師法施行規則は、内閣によって制定された政令です。
(4) 美容師法施行条例は、都道府県知事が制定している条例です。
正解(1)
(2) 美容師法施行令は、内閣が定める政令です。
(3) 美容師法施行規則は、厚生労働大臣によって制定された省令です。
(4) 美容師法施行条例は、地方公共団体がそれぞれの団体の議会の議決を経て制定する自主法です。