行政処分
行政処分とは?
行政機関が行政権に基づき行う行政行為のこと。
- (例)理容師・美容師の免許や業務停止、免許の取消、理容所、美容所の検査確認、閉鎖命令など
美容師に対する行政処分
業務停止処分
業務停止処分とは?
都道府県知事、保健所設置市長等から期間を定めて業務の停止が命じられること
業務停止処分を命じられる場合にはどんなものがある?
次のいずれかに該当するときは、都道府県知事、保健所設置市長等から期間を定めて業務の停止が命じられることがあります。
- 法の規定に違反して、理容所・美容所以外の場所で理容・美容の業務を行ったとき。
- 法の規定に違反して、理容・美容の業務を行うにあたって、皮膚に接する布片及び器具を清潔に保つなどの衛生措置を講じなかったとき。
- 理容師・美容師が、伝染性の疾病にかかり、その就業が公衆衛生上不適当と認められたとき。
業務停止処分(都道府県知事・保健所設置市長等による)
- 理容所・美容所以外での業
- 衛生措置を講じなかった場合
- 理容師・美容師が伝染性の疾病にかかった場合
免許取消処分
免許取消処分とは?
厚生労働大臣から免許を取り消されること
免許取消処分を命じられる場合にはどんなものがある?
以下に該当する場合は、厚生労働大臣から免許を取り消されることがあります。
- 精神の機能の障害により、理容師・美容師の業務を適正に行うにあたって必要な認知、判断及び意思疎通を適切に行うことができない者とされたとき。
- 業務停止処分に違反して、業務停止期間中に理容・美容の業務を行ったとき。
免許取消処分(厚生労働大臣による)
- 精神機能障害
- 業務停止期間中の業
美容師法条文
厚生労働大臣は、美容師が第3条第2項第一号に掲げる者に該当するときは、その免許を取り消すことができます。
都道府県知事は、美容師が第7条もしくは第8条の規定に違反したとき、又は美容師が伝染性の疾病にかかり、その就業が公衆衛生上不適当と認めるときは、期間を定めてその業務を停止することができます。
厚生労働大臣は、美容師が前項の規定による業務の停止処分に違反したときは、その免許を取り消すことができます。
第1項又は前項の規定による取消処分を受けた者であっても、その者がその取消しの理由となった事項に該当しなくなったとき、その他その後の事情により再び免許を与えるのが適当であると認められるに至ったときは、再免許を与えることができます。
開設者に対する行政処分
閉鎖命令
閉鎖命令とは?
都道府県知事、保健所設置市長等から期間を定めて、理容所・美容所の閉鎖を命じられること
美容所の開設者に対する処分。
閉鎖命令を命じられる場合にはどんなものがある?
次のいずれかに該当するときは、都道府県知事、保健所設置市長等から期間を定めて、美容所の閉鎖を命じられることがあります。
- 美容所の開設者が法の規定に違反して、管理美容師をおかなかったとき。
- 美容所の開設者が法の規定に違反して、衛生措置を怠ったり、行わなかったとき。
- 美容所の開設者が、業務停止期間中の美容師(アシスタント等も含む)に美容の業を行わせたとき。
- 美容師が、法の規定に違反して職務上講ずべき衛生措置を怠ったことについて、その美容所の開設者が、違反行為を防止するために相当な注意及び監督を怠っていたとき。
閉鎖命令(都道府県知事・保健所設置市長等による)
- 管理美容師をおかなかったとき
- 衛生措置を行わなかったとき
- 従業員に業務停止期間中の業をさせる
- 従業員の衛生管理の注意監督不足
行政処分まとめ
業務停止処分→都道府県知事、保健所設置市長等が行う。
免許の取消処分→厚生労働大臣が行う。
- 美容師の免許は指定登録機関、つまり試験センター、つまり厚生労働省の管轄なので免許の取消処分は厚生労働大臣が行うかたちになります。
美容師法条文
都道府県知事は、美容所の開設者が、第12条の3若しくは第13条の規定に違反したとき、又は美容師でない者若しくは第10条第2項の規定による業務の停止処分を受けている者にその美容所において美容の業を行わせたときは、期間を定めて当該美容所の閉鎖を命ずることができます。
当該美容所において美容の業を行う美容師が第8条の規定に違反したときも、前項と同様とします。ただし、当該美容所の開設者が、美容師の当該違反行為を防止するために相当の注意及び監督を尽したときは、この限りでない。
不利益処分
不利益処分とは?
処分の相手方(理容師・美容師・理容所・美容所など)に不利益を与える処分
不利益処分を受ける者に意見陳述の機会はない?
- 行政処分(不利益処分)を受ける者には、あらかじめ処分の理由を通知し、その者に聴間または弁明のいずれかの方法で意見陳述の機会を与えなければなりません。
聴聞(ちょうもん)とは?
- 聴聞(ちょうもん)…不利益処分の対象予定の人から、口頭で意見を述べたり、証拠書類を提出したり、行政機関に対して質問をすることができる手続。
弁明(べんめい)とは?
- 弁明(べんめい)…不利益処分の対象予定の人から、弁明書や、証拠書類を行政機関に提出する手続。
比較的重い不利益処分を行う場合に実施されるのは、聴聞と弁明のどっち?
聴聞
免許取消処分の場合に実施されるのは、聴聞と弁明のどっち?
聴聞
業務停止処分の場合に実施されるのは、聴聞と弁明のどっち?
弁明
不利益処分において、聴聞や弁明の手続きを経ないで処分することもできる?
できない。このような一定の手続きを経ないで処分をしたときは、その行政処分そのものが無効になります。
行政手続法第12条(処分の基準)
行政庁は、処分基準を定め、かつ、これを公にしておくよう努めなければなりません。
行政庁は、処分基準を定めるに当たっては、不利処分の性質に照らしてできる限り具体的なものとしなければなりません。
行政手続法第13条(不利益処分をしようとする場合の手続)
行政庁は、不利処分をしようとする場合には、次の各号の区分に従い、この章の定めるところにより、当該不利益処分の名人となるべき者について、当該各号に定める意見障述のための手続を執らなければなりません。
次のいずれかに該当するとき聴聞
イ 計認可等を取り消す不利益処分をしようとするとき。
ロ イに観定するもののほか、名あて人の資格又は地位を直接にはく奪する不利は処分をしようとするとき。
ハ 名あて人が法人である場合におけるその役員の解任を命ずる不利益処分、名あて人の業務に従事する者の解任を命ずる不利益処分又は名あて人の会員である者の除名を命ずる不判益処分をしようとするとき
ニ イからハまでに掲げる場合以外の場合であって行政庁が相当と認めるとき
前号イからニまでのいずれにも該当しないとき弁明の機会の付与
行政手続法第14条(不利益処分の理由の提示)
行政庁は、不利益処分をする場合には、その名あて人に対し、同時に当該不利益処分の理由を示さなければなりません。ただし、当該理由を示さないで処分をすべき差し迫った必要がある場合は、この限りでない。
行政庁、前項ただし書の場合において、当該名あて人の所在が判明しなくなったときその他処分後において理由を示すことが困離な事情があるときを除き、処分後相当の期間内に、同項の理由を示さなければなりません。
不利益処分を書面でするときは、前2項の理由は、書面により示さなければなりません。
審査請求
審査請求とは?
処分に関して国民が行政庁に不服を申し立てる制度
行政庁によって権利利益を侵害された場合は、行政不服審査法により、不服を申し立てることができます。
行政不盟審査法第1条第1項(目的等)
この法律は、行政庁の違法又は不当当な処分その他会権力の行使に当たる行為に関し、国民が簡易出速かつ公正な手続きの下で広く行政庁に対する不服申立てをすることができるための制度を定めることにより、国民の権利利益の教済を図るとともに、行政の適正な運営を確保することを目的とします。
審査請求の提出先は?
A. 審査庁
審査庁では、事実をよく調べたうえで、審査請求者の言い分が正しいと認めたときは、その審査請求の処分の対象となった行政処分の全部または一部を無効にする決定をします。
審査請求の棄却とは?
審査請求に対して、処分庁の行った行政処分が違法でも不当でもないと認めたときの審査庁の決定
審査請求の却下とは?
審査請求に対して、処分庁の行った行政処分が違法でも不当でもないと認めたときの審査庁の決定
審査請求の裁決とは?
審査請求についての審査庁の決定決定
不服申立てができる期間は?
- 不服申立てができる期間は、処分があったことを知った30日の翌日から3カ月以内。
罰則(過去出題)
罰則とは?
法律の規定違反に対して、国が権力を発動して刑罰を科することを定め、それによって法律の効力を保障しようとするもの
- 刑罰は必ず裁判によって科されます。
行政罰とは?
美容師法のような行政法規に違反した者に対して科せられる刑罰を行政罰という。
- 行政罰は、一般の刑罰と同様に刑事訴訟法の手続きによって科せられます。
【裁判の流れ】
①捜査機関(検察庁、警察等)への犯罪の告発、通報
告発は、公務員が行うことが多いが、一般人も告発を行うことができます。
②捜査機関の捜査
犯人の発見、証拠収集等を行う。
③公訴の提起
検察官が裁判所に対して、刑調を科することを求めること。「起訴」といわれています。
④公判
裁判所の法廷で、裁判官による事件の審理が行われます。
⑤判決
有罪または無罪の決定であり、有罪と決定されれば、被告に対して刑の言い渡しがあります。
⑥判決の確定
上級の裁判所に訴えることによって判決の是弟を争うことができる期間が過ぎてしまったときに、判決が確定します。
⑦刑の執行
判決に従って、被告が刑調に処せられます。
理容師法・美容師法の罰則(過去出題)
理容師法・美容師法の罰則の、刑罰の種類は?
理容師法・美容師法の罰則では、刑罰の種類は罰金(30万円以下)のみ。
法では、次の①から⑤までの行為のいずれかをした者を30万円以下の罰金に処する旨を規定しています。
①無免許
美容師免許を受けないで、美容を業とした者
②開設届の不提出・虚偽など
- 美容所を開設しようとするときに、都道府県知事、保健所設置市長等に対して、その美容所の位置、構造設備、従業者の氏名等の届出をしなかった者
- その後において、これらの届出事項に変更があったときに届出をしなかった者
- 美容所を廃止したときに届出をしなかった者
- 届出の際に、偽りの事項を記載して届け出た者
③未検査確認営業
美容所の開設の届出をしたが、その構造設備について都道府県知事、保健所設置市長等の検査確認を受けずにその美容所を使用した者
④環境衛生監視員への妨害
環境衛生監視員による理容所、美容所の立入検査を拒み、妨げ、又は忌避した者
- 「拒み、訪げ、又は忌避する」とは、環境衛生監視員の立入検査の職務の円滑な執行を妨げる一切の行為をいう。
- このような行為をした者は、開設者、従業者、家族等に関わらず、すべて処罰の対象とされます。
⑤閉鎖命令違反
美容所の閉鎖命令に従わなかった者
次の各号のいずれかに該当する者は、30万円以下の調金に処します。
- 第6条の規定に違反した者人
- 第11条の規定による届出をせず、又は虚偽の届出をした者
- 第12条の規定に違反して美容所を使用した者
- 第14条第1項の規定による当該職員の検査を拒み、訪げ、又は忌避した者
- 第15条の規定による美容所の閉鎖処分に違反した者
両罰規定とは?
美容所の開設者である法人の代表者や美容所の従業員が罰則にふれる行為をした場合には、その行為をした本人だけではなく、その監督責任者である開設者も罰則の対象とするという規定。
- 理容師法・美容師法の罰則のうち両罰規定の対象となるのは、無免許を除く4つの違反行為(前述の②③④⑤)のみ。
法人の代表者又は法人若しくは人の代理人、使用人その他の従業者が、その法人又は人の業務に関して前条第二号から第五号までの違反行為をしたときは、行為者を罰するほか、その法人又は人に対しても、各本条の刑を科します。
- 「法人の代表者」→社長、代表取締役、理事長など
- 「法人」→法律によって権利の主体となることが認められている団体のこと
- 「法人」の例→地方公共団体、財団法人、社団法人、株式会社など
- 「代理人、使用人、その他の従業者」→法人や個人事業主のもとで、美容の業務に従事する者
- 「代理人」→法人や個人事業主に代わって権利を行使し義務を負う者
- 「使用人」→代理人と雇用関係にある者
総まとめ問題
衛生上必要な措置を講じなかった美容師は業務の停止処分を受けることがあるが、その処分に違反して美容の業を行った場合、その美容師は( A )を受けることがある
(1)免許の取消処分
(2)罰金刑
(3)美容所の閉鎖命令
(4)事情聴取
正解(1)…業務停止処分に違反して、業務停止期間中に理容・美容の業務を行ったとき免許取消処分になります。
業務停止処分を受けた美容師がその期間中に美容の業を行ったとき免許取消処分になることがあるが、その美容師に美容の業を行わせた開設者も( B )を受けることがあります。
(1)閉鎖処分
(2)業務停止処分
(3)罰金刑
(4)刑事告発
正解(1)…理容師・美容師が、法の規定に違反して薬務上講ずべき衛生措置を怠ったことについて、その理容所・美容所の開設者が、この違反行為を防止するために相当な注意及び監督を怠っていたとき閉鎖処分及び命令が出されることがある
衛生上必要な措置に関する立入検査を妨害した者は( C )を受けることがあります。
(1)罰金刑
(2)免許取消処分
(3)美容所の閉鎖命令
(4)業務停止処分
正解(1)…第14条第1項の規定による当該職員の検査を拒み、訪げ、又は忌避した者は30万円以下の罰金に処される
美容所の開設に関する次の記述のうち、正しいものはどれか
(1)美容所を開設する者は、構造設備の検査確認を受けて使用を開始した後、すみやかに従業する美容師の氏名を届け出なければならない
(2)美容所の開設者は、届出事項に変更が生じるときは、事前に都道府県知事等に届け出なければならない
(3)美容所の開設者となる者は、美容師の免許を受けた者でなければならない
(4)美容所の閉鎖処分に違反した開設者は、30万円以下の罰金に処されることがある
正解(4)
(1)…美容所を開設しようとする者は、厚生労働省令の定めるところにより、美容所の位置、構造設備、第12条の第1項に規定する管理美容師その他の従業者の氏名その他必要な事項をあらかじめ都道府県知事に届け出なければなりません。実際に店舗を開くには、この届出をしたのち、さらにその施設(店舗)の構造設備について検査を受け、確認されなければ使用することができないこととなっています。この検査確認に要する日数も見込んで、開店予定日の相当前に届出をすることが適当であろう。
(2)…変更の届出は、その旨を記載した届出書を当該美容所所在地の都道府県知事、保健所を設置する市の市長又は特別区の区長に提出することによって行うものとします。また、事前にではなく変更や廃止があったのち速やかに行うこととなっている
(3)…そのような規定はない。ただ開設にあったって必要な手続きがあり、怠ると罰金に処されることもあります。