クリーム・乳液の作用
クリーム・乳液には、主に以下の4つの作用があります。
- 清浄作用
- マッサージによる血液循環促進作用
- 保護作用
- 柔軟湿潤作用
それぞれ詳しく見ていきましょう!
①清浄作用とは
クリーム・乳液には、その油相成分によって皮膚面の汚れやメイクアップ用香粧品などを溶解させたり、顔料などを乳化・分散させ、水で洗浄しやすくする作用があります。
例:クレンジングクリームやクレンジングミルクなど
②マッサージによる血液循環促進作用
(マッサージ)クリームを使用すると、油性皮膜が潤滑剤となり、マッサージ効果が高まります。
マッサージ効果とは、マッサージにより真皮や皮下組織に刺激があたえられ血液の循環が促進された結果、細胞の活性化や新陳代謝が促進されることを言います。
③保護作用
クリームや乳液は、皮膚面の皮脂膜の代わりとして、外部からの物理的、化学的刺激に対して皮膚を守ります。
例:ハンドクリーム・・・皮膚面の脱脂・肌荒れを防ぐ。
例:ベースクリーム・・・化粧崩れを防ぐとともに、プレストパウダー(固型おしろい)、ルースパウダー(粉おしろい)、ファンデーションなどによって皮脂が吸収され、皮膚が乾燥するのを防止する。
④柔軟湿潤作用
クリームや乳液は、皮膚へのエモリエント効果(皮膚を柔軟にする作用)も持ちます。
ただ、人間の皮膚の最も理想的なエモリエント剤は皮脂そのものです。皮脂膜は皮膚面を覆い、乾燥を防ぐと共に、皮膚に柔軟性、弾力性を与える役目を果たします。
しかし皮膚膜は、常に理想的な状態にあるとは限らず、冬季では皮脂が不足しがちで肌荒れが生じやすいです。そのような際に、ハンドクリームなどで皮膚面を補います。
また、年齢と共に皮脂の分泌量は低下し、皮膚面での皮脂膜の形成が不十分になるのでそのような際にも、ハンドクリームなどで皮膚面を補った方が良いです。
クリーム・乳液の作用まとめ表
清浄作用 |
|
---|---|
マッサージによる血液循環促進作用 |
|
保護作用 |
|
柔軟湿潤作用 |
ただ、人間の皮膚の最も理想的なエモリエント剤はクリームではなく、人間の皮脂そのもの。 |
また、クリームは一般に乳濁液(=エマルジョン)である。
クリーム・乳液の種類
乳化について
食べ物を例に挙げると、ボトルに入ったフレンチドレッシング。冷蔵庫から取り出した時は層になってスパッと分かれている。
しかし、食べる前にボトルをせっせと振ると、酢と油は混ざり合って濁り、一体化する。
この混ざり合った状態を乳化という。
ごくシンプルに捉えると、乳化とは、水と油など本来混ざり合わない液体の一方を微粒子にして他方に分散させること。
水と油の乳化には、水中油滴型(O/W型)と、油中水滴型(W/O型)がある。
水中油型(O/W型)
水中油滴型には、以下のような食品がある。
- 生クリーム
- マヨネーズ
- 牛乳
→これらの食品は、水の中に油滴が散っている状態。
- 水が優位になっていて、あんまり油っぽく感じない。
油中水型(W/O型)
油中水滴型には、以下のような食品がある。
- バター
- マーガリン
→これらの食品は、油の中に水滴が散っている状態。
- 油が優位になっていて、食べた感じが、すごく油っぽい。
先ほどのドレッシング、振るのをやめた途端、また2層に分かれてしまうのは周知のこと。このように混ぜ合わせただけでは乳化の状態はキープできない。
このとき必要となるのが、水と油の境界に作用し、細かい粒子のまま留まらせる乳化剤である。すべてのタンパク質に乳化剤としての働きはある。
マヨネーズなら卵黄のレシチン、バターなら乳カゼインといった天然の乳化剤が働くことで、乳化は保たれている。
この状態をより安定させるため、乳化剤は添加物としても多く開発されている。
水中油滴型(O/W型)
水の中に油。マヨネーズ。水っぽい。
油中水滴型(W/O型)
油の中に水。バター。油っぽい。
【引用】あまから手帖 様 、管理栄養士の料理雑学ブログ 様
https://www.amakaratecho.jp/ryouririka/06
https://www.nutritionist-blog.com/2014/08/owwo.html
クリームの種類
クリームの種類は主に以下のようなものがあります。
- 弱油性クリーム
- 中油性クリーム
- 油性クリーム
- 無油性・無水性クリーム
それぞれの特徴について順を追ってみていきましょう!
①弱油性クリーム
弱油性クリームとは、油分10~30%のクリームのことを言います。
弱油性クリームには、以下のようなものがあります。
- バニシングクリーム
- 弱油性エモリエントクリーム
- ベースクリーム
【バニシングクリーム】
ステアリン酸カリウムを乳化剤としたO/W型クリーム。
- 液状の油性原料は含まれておらず、皮膚に塗布しても消失する(vanish:消える)感じがある。
- 使用感がさっぱりしているため、脂性肌を対象とする香粧品によく使用される
- バニシングクリームに10~20%程度の油性成分を加えたものは、弱油性エモリエントクリームやベースクリームとよばれる。
②中油性クリーム
中油性クリームは、油性成分30~50%ののO/W型クリームのことを言います。
中油性クリームには、以下のようなものがあります。
- エモリエントクリーム、
- モイスチャークリーム、
- ナイトクリーム
- ハンドクリーム
- ベビー用クリームなど
【特徴】
- 使用感が弱油性クリームと油性クリームとの中間
- 角質層に浸透しやすい油性成分を含んでいるので、それによって作られる油性皮膜が皮膚面を覆い、適度に水分蒸発を抑制する
- ハンドクリームは、シリコーン油などを配合することにより撥水性を与えている。
③油性クリーム
油性クリームは、油分50%以上のクリームのことを言います。
ただ、油性成分が多いもの(油分50%以上)はすべてW/O (油の中に水型)になるわけではありません。(=水より油の方が多くても水中油型のものもある)
油性クリームには、以下のようなものがあります。
- コールドクリーム
- クレンジングクリーム
- マッサージクリーム
- アイクリーム
- ウォータープルーフタイプ
【コールドクリーム】
・・・化粧落とし用、マッサージ用、化粧下地用など幅広く用いられるクリーム。クレンジングクリームやマッサージクリームの基礎
- コールドクリームは油分が多くこってりしているが、肌の上に乗せるとすぐに蒸発して冷たく感じることから「コールド」という名前がついています
- 敏感肌や乾燥肌の人には優しいクリームといえる
- 現在のコールドクリームの原型は、1900年ごろの流動パラフィンにミツロウとホウ砂を加えたものだといわれている。
- コールドクリームは、化粧落とし用、マッサージ用、化粧下地用など幅広く用いられ、その後、これらを基本として、機能の異なるクレンジングクリームやマッサージクリームが誕生した。
つまり、以下のクレンジングクリームやマッサージクリームの基礎には、コールドクリームが存在しています。↓
【クレンジングクリーム】
・・・皮膚の清浄やメイクアップリムーバーとして使用するクリーム。
- 現在はほとんど乳化型でW/O型とO/W型がある。
- 濃いメイクアップを落とすには油性成分の多いW/O型が良い。
- 普通のメイクアップを落とすにはO/W型のクリームが良い。
クレンジングクリームの必要機能は以下の通り↓
- 皮膚の表面温度で液化しやすい。
- 皮膚への吸収性がない。
- 油相の粘度は容易に薄くのばすことができ、その反面、皮膚上のメイクアップや汚れなどを懸濁することができる程度である。
- 乳化のタイプによって、布やティッシュペーパーで容易にふき取ったり、洗い流すことができる。
- 使用後は、皮膚に油っぽさを残さない。
【マッサージクリーム】
・・・マッサージの際に使用されるクリーム。
- コールドクリームからの変身の代表
- 現在は、マッサージしやすく、のびのよいクリームが求められる
- 最近は非イオン界面活性剤のみで乳化した製品が多い。
- W/O型とO/W型、乳化状のものもある。
【ウォータープルーフタイプ】
・・・夏季用やスポーツ用として耐汗・耐水性に優れた、落ちにくいクリーム
- 日やけ止めやファンデーション、アイメイク製品、夏やスポーツ用のメイク用品によく使用される
無油性・無水性クリーム
油分0%のクリームを無油性型、水分0%のクリームを無水性型と言います。
【無油性型クリーム】油分0%
- 一般に透明、又は半透明で、ゼリー状あるいはゲル状。
- 水溶性のゲル化剤を使って高粘度を保っている。
- 使用感はさっぱりしていて夏季用化粧下地などに使用される。
- 肌への水分補給、保湿効果がある。
- 界面活性剤を添加し、洗浄用・メイク落とし用の製品としたものも販売されている。
【無水性型クリーム】水分0%
- リクィファイニングクリームともよばれ、代表的なものに油性リクィファイニングクレンジング(皮膚につけ、指で圧すると液状化(=リクィファイニング)する)がある。
- 流動パラフィンにロウ類やポリエチレンを加え固形化したもの
- 製法が簡単
- 以前は、舞台化粧や映画、テレビ用の油性メイクアップ落としとして用いられた。
- 現在は、油性成分の多いクレンジングクリームに用いられることが多い。
乳液
クリームと比べ油性成分が少ないもの。
皮膚の清浄作用、保護作用のほか、柔軟湿潤作用(エモリエント効果)をもつ。
- 水と油のエマルジョン。
- 一般に液状で肌にのばしやすい。
- 水中油型及び油中水型の両方あるが、一般的に使われている乳液は、ほとんど水中油型(O/W型)。
- 油性成分の割合が10~20%のものが多い
- 保湿剤も10%程度含まれている。
- クリームよりも粘度が低いので、水溶性高分子物質を添加し、使用しやすい粘度にしている。
- 普通肌の人、脂性肌の人どちらにも適している。
- 若い人が使用する場合や夏季の使用には肌が油っぽくなりやすいので、クリームよりも乳液が適している。
クリーム・乳液まとめ問題
クリームに関する次の記述のうち, 正しいものはどれか。
(1) クリームには必ず油性の成分と水性の成分の両方を含んでいる。
(2) コールドクリームは油性成分を流動パラフィン、乳化剤としてミツロウにホウ砂を加えて作った石けんを使っている
(3) 油性成分が多いものはすべてW/O (水中油型)になる。
(4) クレンジングクリームの必要機能の一つに「皮膚への吸収が良い」ということがある。
正解(2)
(1)…クリームには油性の成分を含んでいないものもある。
(3)…油性成分が多いものはすべてW/O (水中油型)になるわけではない。
(4)…クレンジングクリームの必要機能の一つに「皮膚への吸収が無い」ということがある。
クリームに関する次の文章の( )内に入る語句の組合せのうち,正しいものはどれか。
「典型的なバニシング・クリームは,( A )を乳化剤とした。( B )型の( C )クリームである。」
(1) A:ステアリン酸カリウム B:O/W型 C:無水性
(2) A:流動パラフィン B:W/O型 C:無油性
(3) A:ステアリン酸カリウム B:O/W型 C:弱油性
(4) A:流動パラフィン B:W/O型 C:弱油性
正解(3)
クリームに関する次の記述のうち,正しいものはどれか
(1)クリームの機能のなかに、マッサージによる血液循環促進作用があるが、これは肌に塗布することで、実際にマッサージしたことと同じように血流を促進させる効果のことをいう。
(2) クリームは、必ず油性成分を含んでいる。
(3) 水分と油分で油分が多いものをW/O(油中水型)、水分が多いものをO/W型(水中油型)と表す。
(4) クリームは一般に乳濁液(エマルジョン)である。
正解(4)
(1)・・・マッサージクリームは、塗布するだけで,実際にマッサージしたことと同じように血流を促進させる効果はない。マッサージのときに使用されるのが、マッサージクリームである。
(2)・・・クリームは、無油性のものもある。
(3)・・・水分と油分で油分が多いものをW/O(油中水型)、水分が多いものをO/W型(水中油型)と表す。
乳液に関する次の記述のうち,誤っているものはどれか。
(1) クリームと同じような水と油のエマルジョンである。
(2) 一般的に油分量より水分量の多い水中油型(O/W型)のものが多い。
(3) 一般に粘稠性で肌に薄くのばすには難点がある。
(4) クリームよりも粘度が低いので,水溶性高分子物質を添加し,使用しやすい粘度を保たせている。
正解(3)・・・乳液は、一般に液状で肌にのばしやすい。