香粧品の安定性と取り扱い・使用上の注意
はじめに
「香粧品とは何か」については、1.香粧品の定義・意義 まとめで学びました。
そして、香粧品の必要条件4つにも少し触れました。その4つの中には「安定性の保持」があったかと思います。
では、「安定性」とはどういうことなのでしょうか?
一緒に見ていきましょう!
安定性とは?
消費者が購入し、使い終わるまで変化が少なく消費者の満足する性状、品質を維持できることを言います。
香粧品の経時変化には、どのようなものがある?
香粧品の経時変化(時間が経った時の変化)の種類には以下のようなものがあります。
- 温度による経時変化
- 光による経時変化
- 微生物による経時変化
経時変化の種類別に、原因と具体的な変化をグラフにまとめると以下のようになります。
経時変化種類 | 原因 | 品質の具体的変化 |
温度による経時変化 | 直射日光の窓際や、冷凍庫などの低温・または高温状態での保管・使用。 |
|
光による経時変化 | 太陽光・蛍光灯による紫外線。 |
|
微生物による経時変化 | 手を洗わずに使用するなど、使用者が原因であることが多い(二次感染)。 |
|
微生物汚染の中で、生産工程などメーカーで生じるものを一次汚染といい、消費者の使用・保管状況により起こるものを二次汚染とよんでいます。
香粧品の使用上の注意には、どんなものがある?
上で挙げたような香粧品の経時変化を避けるためにはどうすれば良いでしょうか?
↓具体的には以下のような対策があります。
- 使用するときは、手指を清潔にすること。
- 1度出した中身は、元に戻さないこと。
- フタを開けたまま長時間放置しないこと。
- 使用後は瓶口をきれいに拭き取り、ただちにフタをすること。
- 同じ製品でも、容器につぎ足しをしないこと。
- シーズン香粧品(日焼け止めなど)は、シーズン中に使い終えること。
- 説明書をよく読むこと。
- パフ・刷毛(はけ)等の用具を清潔に保つこと。
問.香粧品の取扱いに関する次の記述のうち、正しいものはどれか。
(1)使用期限の記されていないものは長く使って差し支えない。
(2)品質の劣化を防止するため、クリームを冷凍庫に保管している。
(3)微生物の汚染を防止するため、定期的に容器ごと熱湯消毒していいる。
(4)出しすぎた場合でも、一度出した中身は元へ戻さないようにしていいる。
解答(4)
問.香粧品の安定性と取扱い上の注意に関する次の記述のうち、正しいものの組合せはどれか。
a.クリームは、冷凍庫に保管すると品質の劣化を防止することができいる。
b.香粧品は、太陽光線により変質するものが多いが、蛍光灯の光でも変質する恐れがある。
c.保管温度により商品価値を損なうものにクリーム、乳液、口紅などがある。
d.残り少なくなった容器に新しい製品をつぎ足す場合は、同じ製品であることを確認してから行う。
(1)aとb
(2)bとc
(3)cとd
(4)aとd
解答(2)
a.冷凍庫など、低温状態での保管・使用は温度による経時変化の原因になります。
d.同じ製品でも、容器につぎ足しはしない。
香粧品の保管の注意には、どんなものがある?
香粧品の経時変化を避けるために保管は、何に注意すれば良いでしょうか?
↓具体的には以下のような対策があります。
- 高温になるところなどにおかないこと。
- 直射日光の当たるところにおかないこと。
- 暖房機器周辺に長時間おかないこと。
- 0℃以下になる場所に保管しないこと。
- 空気中の落下細菌が付着しないように保管すること。
問.香粧品の安定性と取り扱い上の注意に関する次の記述のうち、正しいものの組合せはどれか。
a.香粧品を使用するときは、微生物汚染を防ぐために、手指を清潔にすること。
b.クリームや乳液は、冷凍庫に保管すると長期間品質の劣化を防止することができる。
c.容器から出しすぎた中身を元へ戻すときは、手指を石けんで洗ってから行う。
d.香粧品には、品質を維持する目的で、防腐剤などが配合されている。
(1) aとb
(2) bとc
(3) cとd
(4) aとd
解答(4)
a.冷凍庫などの低温状態での保管・使用は、温度による経時変化の原因になります。
b.1度出した中身は、元に戻さない。
問.香粧品の安定性と取り扱い上の注意に関する次の記述のうち、正しいものの組合せはどれか。
a.クリームや乳液は、冷凍庫に保管すると品質の劣化を防止することができる。
b.香粧品は太陽光線により変質するが、蛍光灯の光による品質上の問題はない。
c.香粧品を使用するときは、微生物汚染を防ぐために手指を清潔にする。
d.紫外線による経時変化として、化粧水では変退色、沈殿などがある。
(1) aとb
(2) bとc
(3) cとd
(4) aとd
解答(3)
a…冷凍庫などの低温状態での保管・使用は、温度による経時変化の原因になります。
b…太陽光、蛍光灯による紫外線は、光による経時変化の原因になります。
香粧品と安全性
1.香粧品の定義・意義 まとめで香粧品の必要条件4つにも少し触れました。その4つの中には「安全性の確保」があったかと思います。
では、「安全性」とはどういうことなのでしょうか?
一緒に見ていきましょう!
安全性とは?
安全性とは、ある物事について、リスクがどのくらい許容可能な水準に抑えられている状態か。を言います。
香粧品で言うとしたら、「香粧品を使ったことによってトラブルが起こるリスクがどれくらい抑えられているか」がその香粧品の安全性と言うことになります。
香粧品とアレルギー
人によっては、香粧品によってかゆみを感じたり、かぶれをおこしたりすることもあります。これらのほとんどはアレルギーか過剰症であることが多いです。
近年では、環境や食べ物の変化により、アレルギー体質の人は増加傾向にあるようです。
↓アレルギーを引き起こす香粧品原料は、以下の通り
アレルギーを引き起こす香粧品原料 |
・パラフェニレンジアミン(カラー剤の含有成分) ・色素、防腐剤、殺菌剤、紫外線吸収剤 ・光アレルギー反応を引き起こす原料もあります。 |
香粧品によるトラブル
香粧品のトラブルは、アレルギーや過敏症などの体質による接触皮膚炎によるトラブルが最も多いとされています。
また、香粧品の誤飲・誤食は年々増加傾向にあります。→対処として水か牛乳を飲ませて様子を見ることがあります。
接触皮膚炎の種類には、どんなものがある?
一次刺激性皮膚炎 | ・原因物質が持つ刺激性や毒性により生じるもの
・誰にでも起こりえる皮膚炎 ・パーマ剤、染毛剤、除毛剤など |
---|---|
アレルギー性接触皮膚炎 | ・感作(外部からの刺激に対して生体が過剰に反応している状態)を受けた人が起こすアレルギー症状
・何に感作を受けるかによって異なる(染毛剤のフェニレンジアミンなど) |
光接触皮膚炎 | ・その症状を起こすのに光を必要とする
・紫外線吸収剤、香水など |
問.香粧品と安全性に関する次の記述のうち、正しいものはどれか。
(1)化粧品と医薬部外品でアレルギーの発生状況は同じ。
(2)ほとんどのアレルギーは過敏症。
(3)パラフェニレンジアミンは染毛剤の成分であるが、アレルギーを起こしにくいのでよく使われている。
(4)光がきっかけとなることはない。
解答(2)
香粧品によるトラブルの実例
加水分解小麦含有石けんによる小麦アレルギー(2004年~2010年)
連日この石けんを使用したところ、石けんの中の界面活性剤が皮脂膜、角質層を除去し、皮膚や、鼻、目などの粘膜から加水分解小麦が浸透し、感作が起こった。
これにより、感作部位の皮膚や粘膜で接触性皮膚炎を引き起こした。
感作(かんさ)
外部からの刺激に対して生体が過剰に反応している状態。
香粧品の安全性を十分に考え、使用時の安全性を確保するような方法を考えることが必要です。
薬用化粧品に含まれるロドデノールによる白斑の発生(2011年〜2013年)
ロドデノール含有化粧品の使用者の一部に白斑が生じ、2013年に自主回収した。
問.香粧品の事故に関する次の記述のうち正しいものはどれか。
(1) 加水分解小麦含有石けんによる小麦アレルギーは、誤ってこの石けんが口に入った(誤飲) ことが原因。
(2) 美白成分として加えられていたロドデノールによりアレルギー疾患の白斑が発生した。
(3)以前のスプレーなどの噴射剤には引火性があったが、現在は引火性のない二酸化炭素が使われるので、引火、爆発が起こることはない。
(4) 成分アレルギーなどによる事故のほかに、誤飲による急性疾患や加工時の異物混入でも安全性を損なう。
解答(4)
香粧品の表示成分について
企業は、消費者に対し、アレルギーなどの皮膚障害を引き起こす可能性のある成分についての情報提供をしなくてはいけません。
化粧品
→全成分表示が義務づけられています。
医薬部外品
→厚生労働省告示により指定された、表示成分36品目と化粧品の指定成分102種類の合計138品目(表示指定成分)が配合されているものは、成分表示しなくてはいけません。
- 過去にアレルギー反応や刺激などが報告されたことのある成分だけを表示することになっています。(とあるが、現在は業界自主規制により全成分を表示しています。)
問.表示成分と安全性に関する次の記述のうち、誤っているものはどれか。
(1)企業は消費者に対し、アレルギーなどの皮膚障害を引き起こす可能性のある成分についての情報提供をしなくてはならない。
(2)表示すべき成分として、厚生労働省告示により指定されている表示成分36品目と、化粧品の指定成分102種類の合計138 品目があるが、医薬部外品に成分表示の義務があるのは、表示成分36品目の方だけで、化粧品の指定成分102種類については化粧品にだけ成分表示の義務があるものである。
(3)化粧品は原則全成分表示が義務づけられています。
(4)アレルギー体質の人は、自分がどのような物質にアレルギー反応を示すかを知っておくと良い。
解答(2)
化粧品については全成分表示が義務づけられています。医薬部外品についても、指定されている表示成分36品目と、化粧品の指定成分102種類が配合されているものについては、成分表示の義務があります。
問.香粧品の安全性に関する次の記述のうち、誤っているものはどれか。
(1)化粧品は全成分表示が義務づけられているが、医薬部外品については厚生労働省令で定められたもの以外は表示の義務はない。
(2)香粧品によるトラブルで最も多いのが誤飲誤食。
(3)香粧品で接触皮膚炎には、一次刺激性皮膚炎、アレルギー性接触皮膚炎、光接触皮膚炎などがある。
(4)アレルギー体質の人は、自分がどんな物質に反応を示すか知っておくとよい。
解答(2)
香粧品によるトラブルで最も多いのは、アレルギーです。
(1)医薬部外品については、全成分表示の義務はない。
問.香粧品によるトラブルに関する次の記述のうち、誤っているものはどれか。
(1)最も多いのはアレルギーや体質による接触皮膚炎。
(2)一次刺激性皮膚炎を起こす可能性があるのは、パーマ剤(第1剤)、染毛剤、除毛剤であり、皮膚に付かないよう注意し、付着した場合は速やかに取り除き応急処置することが必要。
(3)香粧品の認飲・誤食の際よく用いられる方法に「水か牛乳を飲ませる」という方法がある。
(4)香粧品の誤飲·誤食は減少傾向にあるが、注意は怠ってはいけない。
解答(4)
香粧品の誤飲・誤食は年々増加傾向です。対処として水か牛乳を飲ませて様子を見ることがあります。
汚染
クリーム、乳液などの香粧品は水を含み、さらに微生物の栄養源となる保湿剤や植物抽出エキスなどが配合されているため、微生物に汚染されやすい。
なので品質を長期間保持することを目的に防腐剤が配合されます。
- 微生物汚染の中で、生産工程などメーカーで生じるものを一次汚染といい、消費者の使用・保管状況により起こるものを二次汚染とよんでいます。二次汚染の方が多い